介護の業界の事務仕事を担って残念に思ったことは次の3つです。
つまりワードやエクセルを使って記録をしているが、紙に印刷して保管する習慣がついているためデータとして保管したり、二われていませんでした。
利用者名簿なども一つの事業所内で共有することがなく、それぞれの担当者が必要な時に独自で作成するというのがあたりまえの光景です。
そのような背景から、業務改善の目的に開発したシステムが現在では有料老人ホームの事務方(施設長、事務、ケアマネージャー、相談員)で活用いただいています。
仕様
事務員さんがつかう小口現金の帳票出力(印刷)が必要なことから、フロントエンドはMicrosoft Accessを使いました。
Microsoft Accessはスタンドアロンで使うのに適したソフトウェアのため、フロントエンドの開発のみでとどめ、バックエンドはMySQLを導入しました。
また、Microsoft Accessだけでフロントエンドを構成するとコストが高くなるため、申し送り機能のみ必要なユーザーにはjavaFXで開発したインターフェイスを使ってもらうことにしました。
機能
下記はAccessを開いたトップ画面です。パスワード機能はあえてつけていませんが、端末ごとに特定フォルダのファイルを読み込んでユーザーを識別する機能を付けています。
これによって、記録をする際にいちいち自分の名前を入力する手間を省きます。
手動でユーザーを切り替えることも可能で、トップ画面で職員名を選択すると以降に入力した内容に選択した職員の名前が自動で記録されます。
利用者データベース機能
有料老人ホームご入居者様の情報を一覧で確認できる画面です。この画面は確認のみで編集や新規入力は別画面で行います。
一覧画面ひだり端のボタンを押すと下記の画面がひらき情報の編集と詳細の確認ができます。
ケアプラン満了日リスト
一覧画面の「ケアプラン期間」のボタンを押すことで、現在ご入居されている方が、居室ごとにケアプランの期間が表示されます。
ケアプランの期間満了日が近いご利用者様は黄色と青色で表示されるので、申請のタイミングを間違えないように確認ができます。
目的別顧客リスト
現在利用されているご利用者様を抽出して、居室ごとに一覧で帳票を出力します。下記では介護度、負担割合、年齢などを表示していますが、目的に応じてそのほかの情報も表示が可能です。
右側に空白の箇所が多いのは、申し送り時などのメモを記入できるようにするためです。
介護保険履歴管理
介護保険が更新されるたびに、データベースも更新します。履歴が失われないように過去の介護度なども自動で保存されるようにしています。
既往歴確認
ご利用者様の主な疾病を記録するエリアです。
看護サマリー作成
下記のアカマルのボタンを押すと、特定フォルダに保存されているExcelで作成された看護サマリーが立ち上がり、データベースの情報を追記されるという仕様です。
病院への入院時に必要な看護サマリーですが、基本情報などが入力済みの状態で出力されますので、とても便利です。
診療申込書作成機能
ボタンを押すことで、基本情報を問診表の書式に合わせて転機します。
転記するのは基本情報のみで、あとは症状に合わせて手書きで追記する仕様ですが、作業時間の短縮に貢献できています。
ケアプラン作成機能
ケアマネージャーの作成するケアプランを管理する機能を追加しています。
アセスメントとケアプランの履歴を管理して、それぞれが連動する仕組みです。
アセスメント入力
アセスメントは施設独自方式を採用しています。
入力した項目から、実際のケアに利用する書式に落とし込む仕様です。
ケアプラン入力
所定の項目を入力することにより、ケアプラン1表、2表、モニタリング表モニタリング評価を出力できる仕様です。
申し送り機能
介護施設はシフトで勤務が決まるため、事務所内でもすべてのメンバーが出勤することは稀です。従来ではいない人にはデスクにメモを残したり、申し送りノートなどに記載したりしていました。
紙ベースでは、履歴管理や既読管理ができないので掲示板機能を作りました。
一覧では主題と内容の一部分が表示されていますが、左端の詳細ボタンを押すことで、別窓が開き本文がすべて読めます。
同時に開いたユーザーが既読したことを記録して、すべての事務所メンバーが既読になれば全員既読のチェックが入る仕様です。
それに加え日付と利用者ごとに絞り込みが可能で、印刷用の一覧表示も用意されています。
java版
こちらはMicrosoft Accessがインストールされていないパソコンからでも申し送りが読めるようにJavaで開発したバージョンです。
Accessと同様に同じバックエンド(MySQL)を参照しています。
小口現金管理機能
毎日の小口現金管理に、当社では青色伝票、現金出納帳、証憑用紙というものを使っています。
施設の小口現金は毎月30万円以上の入出金があるので、結構ボリュームのある作業ですが、従来ではこれを手書きで行っていました。(科目ごとにゴム印まで用意していて、まるで昭和の事務風景です。)
効率が悪いため、伝票作成から印刷までをフォローするシステムを作りました。
科目コードと補助コードは関連するものだけが表示されるようにしたので、担当者は選択するだけなので入力ミスが少なくなりました。
月が替わると伝票番号が1001番に戻るというような独自ルール小さな独自ルールもいくつかありましたがことごとく自動化しましたので、作業時間の軽減に大きく貢献できました。
青色伝票出力
入力内容を所定の伝票の枠に合わせた形で出力されますので、後は伝票をプリンターに入れて印刷するだけです。
伝票の紙がカーボン紙になっていたため、インクジェットプリンターをつかって紙詰まりに注意品がら印刷します。
インクジェットプリンターに紙をセットする具合で、枠からずれることもありますが社内では許容範囲のためそこまで厳密にはしていません。
証憑用紙出力
領収書やレシートを一枚ずつ証憑用紙に貼り付けるという珍しい方式をとっていて、適用部分や証憑番号なども手書きで管理していました。
入力内容が証憑用紙として印刷されるので、担当者は切り貼りするだけになりました。
現金出納帳
従前では現金出納帳はエクセルで管理されていたので、その書式に合わせた形で、Accessからエクスポートします。
赤丸のボタンを押すことで、伝票ごとのグループに分けてデスクトップにエクセルとして出力されます。
従前の現金出納帳と同じ並びで出力するため、担当者はコピー&ペーストするだけで管理できる仕様です。
日用品コスト集計機能
ご利用者様が使った日用品のコストを月末で集計して請求するためのデータベースです。
こちらも従前では紙で管理していた作業を、データベースに置き換えています。入力作業を事務スタッフで行うことになってしまったため、作業は増えてしまいましたが、集計作業が圧倒的に簡易になりました。
申請スタッフ、ご利用者様、商品(日用品)を検索して入力、記載日や記載者は自動入力するので、あとは数量を入れるだけです。
利用者ごとや、月ごとに抽出できるので請求業務の作業時間が大幅に短縮できました。
受診記録作成機能
施設では病院の付き添いを行いますので、その内容を記録しています。こちらも従前では手書きでしたが、データベースに置き換えています。
印刷して紙でも保管していますが、過去の受診歴が確認できるのでご利用者様のご家族や、往診医と話し合いを行うのに助かっています。
今後追加予定の拡張機能
いまも、業務の中で「こんな機能があったらいいな」ということがたくさんあります。今後Accessに追加したい機能は次の通りです。
コスト面から全ての端末にMicorosoft Accessをインストールするのが困難なため、現在Accessで行っている機能をJavaでの開発に置き換えていきたいと考えています。
そのほかにも、拠点間でのデータ共有を可能にするためPHPでのWebデータベースに置き換えていくのもいいかと思っています。
まとめ
介護施設ではパソコンをワープロのように使っていますので、せっかくのデータが二次利用されずに紙の中に埋もれてしまっています。
当初は顧客リストだけでも残せたら便利と思って開発しましたが、思いのほかニーズが多くてどんどん機能が増えていきました。
私の勤めている施設でも、このようなデータベースは重宝されているので、同じようなニーズが多いものと思います。
この記事がどなたかの参考になれば幸いです。
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